大食いクリエイターとして活躍するりっかちゃんが、ジビエ料理との出会いをきっかけに狩猟免許の取得を視野に入れている。「命をムダにしたくない」という彼女の言葉は、これまで量的パフォーマンスが中心だった大食い業界に、食材の背景や倫理性という新しい視座を投げかけた。害獣として駆除された動物の肉が廃棄される現実を知り、食べることで命を活かしたいという思いが、次のステージへの原動力となっている。
参考: 「命をムダにしたくない」大食いクリエイター・りっかちゃんがジビエに衝撃を受け、狩猟免許を考えるまで(集英社オンライン)
分析・見解
再生数競争で疲弊した大食い業界とりっかちゃんの転換
りっかちゃんの発言は、大食い業界が10年来抱えてきた構造的な課題への一つの答えになりうる。YouTube全盛期以降、大食いの動画は再生数を競うあまり「より多く、より早く、より奇抜に」というエスカレーションを続けてきた。その結果、2023年頃から視聴者の間で「食べ物を粗末にしているのでは」という批判が目立つようになり、実際に炎上した事例も複数起きている。りっかちゃんがジビエ(野生の鹿や猪などの肉)に関心を持ったのは、こうした批判をかわすための後ろ向きな対応ではない。作り手自身が食の意味を問い直す、前向きな動きとして注目に値する。
捕獲された鹿・猪の8割が廃棄されているジビエの現状
ジビエ市場は2025年時点で約30億円規模だが、年間に捕獲される鹿や猪のうち食肉として利用されるのは2割程度にとどまる。残る8割は埋設や焼却で処分されており、捕獲にかかる費用だけでも年間100億円を超える税金が投じられている。大食いを発信するクリエイターがこの使われていない資源に光を当てれば、地方自治体が抱える獣害対策と、都市部の食文化とをつなぐ新しい流通の道が生まれる可能性がある。
狩猟免許の取得が生む前例のないクリエイター像
さらに、狩猟免許を取得するという一歩は、食材の調達という川上の工程にまで関わる「垂直統合型クリエイター」という、これまでになかった立ち位置を生み出す。これは単なる話題作りではなく、発信する内容の希少性と教育的な価値を同時に高める戦略として合理性がある。
ビジネスへの影響
自治体タイアップと食育教材としての二次利用機会
企業の観点で見ると、ジビエと大食いの組み合わせは三つの収益機会を生む。一つ目は、自治体や猟友会とのタイアップ案件だ。ふるさと納税の返礼品のPRや、ジビエ処理施設の認知度を高めるキャンペーンが考えられる。二つ目は、教育コンテンツとしての強みだ。小中学校の食育教材や、企業のSDGs研修素材として二次利用される価値が高まる。
高齢化した狩猟業界に若い訴求力をもたらすスポンサー価値
三つ目は、クリエイター本人が狩猟者になることで、狩猟用品メーカーやアウトドアブランドとのスポンサー契約が視野に入ってくることだ。狩猟をする人は全国で約9万人、平均年齢68歳という高齢化した市場だが、若い世代や女性への訴求力を持つインフルエンサーは希少な存在であり、協賛の単価は通常の大食い案件の1.5〜2倍が見込める。
事故や批判のリスクに備えたコンプライアンス体制が前提
一方でリスクもある。狩猟には事故や、動物愛護団体からの批判を受けるリスクが伴う。企業としてこの分野に関わる際は、コンプライアンス体制の整備と、関係者との丁寧な対話を前提とする必要がある。