ニュースの概要
SCOグループが、大食いYouTuberとして知られるえびまよ氏と共同で、新チャンネル『えびまよのマシマシ』を開設したと、PR TIMESで発表された。人気の配信者と企業が、チャンネルの立ち上げ段階から手を組む取り組みである。大食い動画は、食べる量の驚きや食べっぷりの気持ちよさで、幅広い世代に見られてきたジャンルだ。そこに企業の運営力や資源が加わることで、動画の企画や発信の幅がどう広がるのかが焦点になる。なお、契約条件や収益の分け方などの詳細は、公表された範囲では明らかになっていない。
引用元: SCOグループが大食いYouTuber・えびまよの新チャンネル『えびまよのマシマシ』を共同開設(PR TIMES)
分析・見解
広告枠の購入から、チャンネルの共同運営へ進む流れ
今回のニュースの核心は、企業が人気配信者の動画に広告を出す関係から一歩進み、チャンネルそのものを共同で立ち上げた点にある。配信者は企画力と固定ファンを、企業は資金や運営の人手、商品や販路を出し合う形だ。
従来のタイアップは、1本ごとの案件で終わる。再生数が伸びても、積み上がった成果は配信者の手元に残りやすい。共同チャンネルなら、動画の蓄積と視聴者との接点が、双方の資産になる。企業にとっては、広告費という「消費」を、育てる「投資」に変えられる点が大きい。料理、旅行、ゲームなど他分野でも、制作会社や芸能事務所が配信者と組む例は広がっている。
大食いが企業に選ばれやすい三つの理由
理由の一つ目は、言葉に頼らず映像だけで伝わることだ。海外の視聴者にも届きやすく、短い切り抜き動画にも転用できる。二つ目は、量という分かりやすい驚きがあり、視聴維持率(=最後まで見られる割合)を保ちやすいこと。三つ目は、食品、飲料、外食といった多くの業種と相性がよいことだ。
一方で、食材価格の上昇が続く今、大量の食材を調達する費用は重い。個人が続けるには負担が大きく、企業の支えが意味を持つ。ただし、量を競う企画は同じ型の繰り返しで飽きられやすい。店舗めぐりや地方食材の紹介、調理の過程まで見せるなど、見どころを増やせるかが長続きの鍵になる。
権利と収益の分け方が、成否を左右する
共同運営でもっとも揉めやすいのは、アカウントの所有者と収益の分配だ。人気が出た後に契約を見直そうとしても、動画の権利が曖昧だと身動きが取れない。契約が終わった後に、動画やチャンネル名を誰が使えるのかを、最初に決めておく必要がある。
大食いは、食べ残しや健康面への批判も受けやすい分野だ。企業が関わると、個人の企画より厳しい目で見られる。2023年10月に始まったステルスマーケティング規制(=広告であることを隠した宣伝の禁止)への対応も欠かせない。
共同チャンネルは「小さな番組枠」として育つ
独自の見方として、共同チャンネルはテレビの番組枠に近いと考える。テレビは制作会社と放送局が組み、枠を時間をかけて育ててきた。同じ構図が、個人の発信者と企業の間で再現されつつある。枠が育てば、スポンサー、物販、イベントへと広げられる。
ただし、枠が育つ条件は、毎回の企画が会社の宣伝に偏らないことだ。視聴者が楽しんで初めて、商品の紹介が自然に受け入れられる。なお、契約の細かい条件や数値目標は、公表されている範囲では分からない。ここで述べたのは、一般的な構図としての読み方である。
ビジネスへの影響
小さく始めて、数字で見直す提携の進め方
同様の提携を考える企業は、まず3〜6か月の試行期間を設けたい。再生数だけでなく、来店数、商品の検索数、問い合わせ数など、売上に近い指標を先に決めておく。成果が出なかった場合の撤退条件も、同時に決めておくと判断が早くなる。
費用は、動画の制作費、食材費、出演料の三つに分けて考える。食材価格が上がる局面では食材費が膨らみやすいので、上限を契約に書いておくと安心だ。撮影や編集は配信者側の体制を生かし、企業は商品提供と販路づくりに集中する分担が現実的である。
契約書で必ず決めておきたい四つの項目
一つ目はアカウントの所有者。二つ目は収益と広告収入の分配割合。三つ目は契約終了後の動画とチャンネル名の扱い。四つ目は炎上や不祥事が起きたときの対応と、活動停止の条件である。契約は、人気が出たときよりも、うまくいかなくなったときのために書くものだ。弁護士など専門家の確認を受け、広告表示のルールも明文化したい。
規模の小さな企業でも使える現実的な入口
地方の飲食店や食品メーカーでも、規模に応じた小さな共同企画なら実行できる。大きな投資の前に、自社の商品と相性のよい配信者を探し、短い企画で試すところから始めるとよい。配信者にとっても、食材費や運営の負担が軽くなり、企画に集中できる利点がある。企業側が口出しを増やしすぎないことが、結局は成果につながる。